塾のマニフェスト




1970年代のいくつかの旅のおわりに、「木の舟」という個人塾のかたちの探求集団の構想(夢想)を書いた。1980年2月16日、丁度30年前の、「日記から」というコラムの連載の最終回だった。前の10回はあとで『旅のノートから』という本に入れたのだけれども、この回は旅のノートではないから省いた。
塾のマニフェストをこのように書いた。



観念だけの議論をしない。勝った負けたの議論をしない。
共同探究の過程そのものを<心のある道>にする。ことばでは納得しても感覚で納得できない部分を切りすてない。むしろそこからくりかえし問いを発する。
理論を獲得することと、生き方を解き放つことと、社会のくみ方を構想することを、三面一体の課題として追求してゆく。
問題意識を禁欲しないことが、アカデミズムをのりこえる全体理論の第一の原則だけれども、成果を具体的に固めてゆくために、年の中心的な主題を定めて集中する方法をとる。自我とエゴイズム。身体と社会構造。時間と死と生。共同性と個体性。根をもつことと翼をもつこと。等々。



後半の15年間は現代社会の理論に主題がシフトしてしまったけれども、「木の舟」の精神は大学や公開講座のゼミナールで追求され、いくつかの忘れられない集団として結実した。今この木の舟は解体して元の樹木に戻り、「樹の塾」といういっそう定着する共同探究の集団として出発しようとしている。「樹の塾」は、これまでの真木の主要な仕事を順次にテキスト(材料)として年々のテーマを設定し、年々2月に新しい参加者を公募し、5月〜7月の初夏の季節にだけ開かれる。雰囲気のよい集団は交信のネットワークを作り、年1回の同窓会を生涯的に開いて実質的な共同探求を深化する。
2010年の第1回は『気流の鳴る音』をテキストとして「自我という夢」というテーマでゼミナールを開く。それ以後は年々、「比較社会学」「芸術社会学」「現代社会論」「宮沢賢治/存在の祭りの中へ」「人間学」「人間と社会の未来」などのテーマを順次に取り上げる。


2010年3月21日












inserted by FC2 system